国債が国際化するとき

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デフレ脱却の目標はたたず、基礎的財政収支も赤字のままです。
安倍首相は当初、アベノミクスで経済成長することで、2020年度にデフレ脱却することを目標にし、日銀が異次元の金融緩和を実施してきました。

思い返せば、安倍第二次内閣が発足(平成24年12月26日)し、直後に黒田日銀総裁が誕生(平成25年 3月20日)しました。そのときの最大の課題はデフレ脱却のための成長戦略でした。これがアベノミクスです。

政府/中央銀行の「統合政府」が行う合わせ技はヘリコプターマネーです。安倍政権になって、財政再建をやろうとしない放漫政策となりました。いま誰も見て見ぬふりをする状態が続いています。

2年以内に「2%の物価上昇率を確保する」と豪語してから丸5年経ちました。
達成時期を6回も先送りし、今や目標達成時期を削除し、日銀は敗北宣言したと理解されています。

日本政府の1000兆円を超える膨大な財政赤字もはいっこうに減らないどころか、今も刻々と利子で増え続けています(財政赤字カウンター参照)。プライマリー・バランスの達成目標も2020年度へ先送りされてしまいました。その達成さえ危ぶまれています。

誰も負担せずにおカネが空から降ってくる?!(Caito/PIXTA)
誰も負担せずにおカネが空から降ってくる?! これがヘリコプターマネー(Caito/PIXTA)

高橋洋一は、日銀の国債購入は「ヘリコプターマネー」と効果は同じだと言っています。永久に日銀が買った国債を保有し続けられる訳がないのですから、所詮ヘリコプターマネーにはなりません。

一方、インフレ率と失業率は逆の相関関係をもっています。
インフレを加速しない失業率(=NAIRU)を「下限の失業率目標」として目標インフレ率2%を管理してるとも言えます。

失業率が最低になったと浮かれていてはいけません。失業率の中身(実態)と本質を見極めないといけません。

日銀当座預金が「ブタ積み」状態となって、銀行各社は先行き不安を抱えリストラを断行し始めました。本来の銀行業では経営が成り立たなくなると見ているようです。

日本の国債は100%自国通貨建て(円建て)です。弱い債権は通常ドル建てですが、そこまで落ちてはいません。
何故か?国債保有者は殆ど国内(法人)だからです。

言い方を変えれば、国民が政府に金を貸し付けて保証しているからです。つまり銀行、生保、年金など金融機関を介して、国民が国家(政府)を保証しているから、債券市場で国債が売り浴びされることがないのです。(預金が好きな日本人ですからね)

日銀は、禁じ手であった”財政ファイナンス”を始めました。株式ETFを公然と買って、不動産信託のJリートまで手を伸ばす始末です。その額が大きいために債権株式市場は日銀に振り回されています。(これは通貨の番人である日銀のやることじゃありません。これはギャンブル)

いま、日銀の危険なギャンブルに振り回されています。もし失敗すれば、国債の信用はなくなり大幅下落となり、金利の大暴騰を招きます。ハイパーインフレという制御不能に陥ります。

ある日突然、国債市場で日本の国債が下落し始めると、海外の投資家は損切りしても、資金引き上げます。そこで海外の国債保有推移が気になります。いまでは海外投資家の保有比率は既に10%を超え、120兆円程になっています。

日銀が買った国債を差し引くと、市場に出回る国債の金額は570兆円です。これに対する海外投資家120兆円で比率が20%を超えます。ユーロ危機でのギリシャ国債の海外比率は80%だったことから比べれば、まだそれほど危機リスクは高くはありませんが、北朝鮮などの戦争リスクがあると、一瞬に危機が起こります。

経済危機は誰も予想してくれません。突然にとんでもない事が起こるのです。今度は日銀危機かもしれません。
水野和夫法政大教授はこんな趣旨のことを言っています。

21世紀は良くも悪くも「犬の尻尾(金融経済)が犬(実物経済)を振りまわす」金融優位の時代となった。世界的な危機は瞬時に国境を超える資本移動によって起きるのであって、税率の引き上げで起こるものではない。国家の危機はなにも戦争だけではない。
日本の財政健全化の意志が弱いとみれば、外国人投資家はそれにつけこんで、「大惨事を引き起こすことで利益の極大化を図る」と警告した。            参考資料;アベノミクスは破たんの方向に進んでいる

今や国債発行額998兆円の中で、449兆円(41.1%)も日銀が保有する異常事態になってます。参考:国債等保有者別内訳(新規Tabで開きます)

日銀は政府の子会社みたいなものですから、(日銀が41%も国債を買ったことにより)連結決算で考えれば政府の負債は6割弱に目減りした恰好になると仰る方がいます。果たしてそうでしょうか?
極端な話、日銀が100%国債を買い占めたら、政府は「借金なし」の健全経営と言えますか?
可怪しいと思うでしょ。こんなバカげた話を堂々とする学者がいるのです。

また水野和夫は「1200兆円もの借金は見方を変えれば、日本はもう『サービス提供社会』へ変貌していると考えられる」と言ってます。国債への出資の見返りは、社会保障というサービスの配当を得ているとも言う訳です。のほほんとした学者の言う事です。

しかし、借金は借金であります。いずれ返さなくてはなりません。踏み倒す方法もありますが、それは戦争や自然災害による不可抗力があった場合で、如何ともどうしようもない状況が生じたときです。
ハイパーインフレになって、国債は紙切れ同然に無価値になるほど経済が混乱すれば、借金はタダ同然になってしまいます。これしか1000兆円を返す方法がないなら、破局(Catastrophe)そのものです。

Naomi_Klein

ナオミ・クラインNaomi Kleinは、災害や危機など大惨事を引き起こすことで利益を極大化を図ることを「大惨事便乗型資本主義 ショック・ドクトリン」と称しています。

かつてアルゼンチンのハイパーインフレでは、物価上昇率は1000%もあったのですから、非現実的なことが、現実には起こったことがあるのです。
これなら、1000兆円は10兆円程度に目減りするので返せるのです。密かに戦争が起こってくれないか?と思っている政治家や官僚がいるかも知れません。

断じて、世界を巻き込むような戦争を起こしてはなりません。それは核戦争となり人類破滅となります。

日本の国債が国際化するのを注意深く見守っていきましょう。そこに次世代の危機が潜んでいるからです。そして戦争には、核戦争には絶対反対していきましょう。

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