先のブログ「里山の過去・現在・未来」でも載せたように、なんと石油が生活を変え、経済を変え、日本の里山も変えて来ました。
江戸時代、日本の里山はハゲ山だった。ところが、石油が使われるようになって、わずか四、五十年の間に森林は回復して、四百年ぶりともいえる豊かな緑を取り戻すことになった。こんなことは、日本の植生史上かつてなかったことです。
この豊かな森林をこれからどうするか、実は再びハゲ山にする危険もあるのです。
養老孟司さんは、このように言っています。(石油に頼らない―森から始める日本再生 :日本に健全な森をつくり直す委員会編 より)
20世紀において、石油はずっと右肩上がりで消費されてきました。石油の需要は下がることは有りませんでした。しかし、消費はどこかで下がることになります。(中略)この時期を専門家は「ピークアウト」と言っています。(中略)
石油がピークアウトして石油がなくなってくると、この国はあっという間に木を伐るでしょう。日本人は徹底的にやりますから、背に腹は代えられないと森を消してしまうことになるのではないか。それが一番気になっています。(中略)
石油の代替として森が燃料として非常に重要になってくる可能性があります。その時に林業の位置がどうなるかということは、いまから考えておかなければならないことです。
養老孟司さんが委員長となって活動しているNPO法人「日本に健全な森をつくり直す委員会」その設立目的は…
2008年に養老孟司を委員長、C.W.ニコルを副委員長に設立し、 2009年に私共が政府に提出した提言書「石油に頼らず、森に生かされる日本になるために」が採用されて、 農林水産省が「森林・林業再生プラン」をつくられるに至る動きをつくってまいりました。 東日本大震災後は、「再生可能エネルギー」なかでも「木質バイオマスエネルギー」を多用するのは良いことだが、 列島の森がそれによって過伐となってしまわないよう、あらかじめ「日本列島の森のグランドデザイン」をつくり、 人工林の賢い使い方や、天然林の保存をしっかり考えられるわが国となるようにと、第二次提言書に書き込みました。 このような提言活動は、今後も続けてゆきます。併せて、次なる時代の「森の市民」を育ててゆくことも各地で展開します。
このような動きから、林野庁の「森林・林業再生プラン~コンクリート社会から木の社会へ」ができました。当時(H21年)は民主党政権で何でも「コンクリート社会から」という飾りが付いています。
参考<<森林・林業再生プラン(イメージ図)>>
その後「森林・林業の再生に向けた改革の姿」(H22年)、「森林・林業基本計画」(H23年7月)閣議決定となったんだそうです。
林業は「保育から利用への転換期」にあります。日本は、森林率は67.4%、世界第3位という森林王国です。
森林に、人がどう関わっていくか、国土にとってとても重要な課題であります。
数十年後の日本に、原風景としてどんな景観が残せるのか?いま私たちに森林のグランドデザインが問われています。