以前の投稿「GDP」に書きましたが、GDPは豊さを測る指標ではありません。私たちの暮しが良くなったのかを比較するには、適当な指標ではありません。
既に投稿で紹介したようにOECDではより良い暮らし指標として
BLI(Better Life Index)を提案しています。(BLIの日本語siteはこちら)
その他にもブータンの国民総幸福量といった考え方もあります。
何れにしても、GDP規模や成長だけで、豊かさを計る指標とは言えないのです。
国連では、イスタンブール宣言(2007年6月)、スティグリッツ報告書(2009年9月)を受けて、古い指標である「一人あたりGDP」から離れて、暮らしの質を測る「超GDP」を、新統計として発表することになりました。
国連の委嘱を受けて、ダスグプタ(教授)チームが始めて提案してたのが「総合的豊かさ報告2012年」(2012年6月) です。
この報告で総合的豊かさで、日本は世界一となったんだそうです。
衝撃レポート これが日本の実力だ 資本 国連調査で「世界一の豊かさ」より
国連の総合的豊かさは、4っの経済的指標からなっています。
- 人的資本、教育水準、教育投資残高
- 生産した資本 設備投資残高 道路港湾など (Infrastructure)
- 社会関係資本(Social Capital)
- 天然資本(Natural Capital) 人手をかけた資本(水田・山林など)
特にⅢの社会関係資本(Social Capital)を築くのは簡単ではありません。世界的に有名になった日本の安全・安心はこれに当ります。
一朝一夕に蓄積できる資本ではありません。また、評価指標が難しい項目でもあります。
日本経済の「質」はなぜ世界最高なのか (PHP新書)で、著者の福島清彦は、最後にこのように言っています。
豊かさを達成したのちの生き方について、ケインズは、それは「豊かさを使って、賢く、好ましく、そして巧みに生きる」(to live wisely, and agreeably, and well)ことであると結論している。そうした賢い、好ましい、巧みな生き方を、ケインズは(金銭的な意味だけでなく、総合的な豊かさを実現する)「よい暮らし」(good life)と呼んだ。日本経済の「質」はなぜ世界最高なのか (PHP新書)より
RIO+20で検討されていた、 Inclusive Wealth Index(IWI: 包括的な豊かさの指標)といったものもあります。
かつてモリパパも現役だった頃、効率化だの、資本回転率だのといった価値観で、頭が一杯でした。
ところが、会社を定年退職し、そういった価値観から距離を置くと、社会や人生を同じ価値観で観ては間違ってしまうことに気付きました。
社会の有り様も、人生の有り様も、成長・拡大することが前提ではありません。豊かで情緒ある生活が重要(目標)なのです。
「経済成長し続ける中でしか、豊かさを実現できない」とした考え方は間違った宗教のようなものです。
社会が教育的になればなるほど、人びとが賢明になればなるほど、文化的で芸術的なものごとが重要になってきます。
欧米も日本もそろそろ、このことに気付く時期に来ているのです。だから、OECDや国連も、GDPに代わる新たな指標Post-GDPを必要としているのではないでしょうか?