パーヴォ・ヤルヴィとドイツ・カンマー・フィルハーモニー

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NHK のクラシックは大抵、N響が定番ですが、2015年2月15日パーヴォ・ヤルヴィ(Paavo Järvi)指揮のドイツ・カンマー・フィルハーモニー(Die Deutsche Kammerphilharmonie)の放映がありました。

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Brahms symphonic chronologyと称して、ブラームスづくしのコンサートであります。大好きなブラームスです。

いま人気の指揮者パーヴォ・ヤルヴィ(エストニア出身53才)と室内オーケストラ、ドイツ・カンマー・フィルハーモニーは、もう15年も一緒に演奏しています。

オペラ並の料金でS:¥13,000、
4公演セット券 S:¥48,000です。大変な人気なんですね。…で、モリパパは、NHK で放映された録画で楽しんでいます。
NHK の放送ならではのインタビューや練習風景などがあって、これが仲々いいですね。パーヴォ・ヤルヴィへのインタビューを紹介します。

このオーケストラは、時代考証に則した演奏を得意としています。例えば、ブラームスは、交響曲第一を40人編成のために作曲しました。ですからワーグナー風に演奏してはならないのです。 ブラームスの作品は、スケールが大きく重厚だというのが定説でしたが、カンマーフィルと演奏するようになり、私のブラームス観は大きく変わりました。
今は、ブラームスにもっと細やかで、琴線に触れる瞬間を感じます。しなやかなアプローチには、適切なサイズのオーケストラが必要です。
時には、スコアに書かれているのに、忘れられていることを試してみます。例えば、ブラームスの交響曲第一番の序奏の後は、~ティア テャぁ テャー~ その後はフォルテに落とし、また全員で、こうした移行(グラデーション)を際立たせることは重要です。
それにより作品全体の構造(ハイライト)がはっきりし、単に重厚で威圧的な音楽ではなく、イキイキとした多層的な音楽になるからです。
とにかく、スコアを探求するための努力を惜しみません。そして書かれていることを協調してみます。 一つ一つの主題や細部が、より自然で表現豊かに語り出すようにするのです。
とても面白いプロセスですが、そのためには自由な発想が必要です。私たちは新な発想を恐れません。

そして更にブラームスについて語ります。
昔、指揮者Hans von Bülowが「Beethovenの10番目の交響曲の様だ」「三大B(Bach,Beethoven,Brahms)」だと絶賛した、あの交響曲第一番を解説しています。
しかしBrams当人は「長ったらしくて、ちっとも愛すべき作品でないのができた」と彼らしい評価を下しているんですが、

ブラームスの交響曲の中では、第一番が最も難しい。作曲家の葛藤が聞こえてくるからです。
ベートーベンの交響曲第10番といえる作品を期待されながら、その期待に応えられないのでは、という恐怖感が伝わってきます。
不可能とも思われる課題に、どこから手を付ければいいか分からない、だから完成までに長い年月(約20年)がかかってしまったのです。
冒頭からして葛藤が感じられます。誤解されることが多いのですが、マエストーゾ(maestoso=威厳をもって)では有りません。壁に頭をぶつけながら(breaking this wall)、状況を打開しよう(find a way)とするブラームスの心の叫びです。
ブラームスの歯がゆさと、情熱が見事に表されています。強い決意も感じられます。

Paavo JärviとOrchestre de ParisによるBrahmsのSinfonie Nr. 1 in c-Moll, op. 68 がYouTube に載っていましたので、これを聞いて下さい。