「資本主義の終焉と歴史の危機 (集英社新書) 」の著者 水野和夫は、その後「閉じてゆく帝国と逆説の21世紀経済 (集英社新書)」のなかで、この先「国民国家」では乗り越えられない。ボスト近代に生き残るのは「閉じた地域帝国」だと主張しています。
英国のブレグジット(Brexit)ショック、米国のトランプ現象そして、EUも民主主義の脅威としてのポピュリズムに覆われ、苦悶する民主主義の時代に突入しました。これが、今の世界です。
日本が戦後70年以上「解けなかった問題」それは、対米従属問題です。今後、どういった社会システムを作るのか?次世代の問題です。
次の社会システムでの頂点には、人間主義、人道主義を据えるべきだと思うのですが、難しく長い道程のようです。
国民国家という単位では、資本帝国に対抗できません。アジア近隣国と「地域帝国」を作って、グローバリズムという資本主義と対抗する以外に方法はないかも知れませんが、ボスト近代を模索したEUのような地域帝国は、アジアでは簡単に作れそうもありません。
西ドイツは、1997~98年のアジア通貨危機が起きたとき、アメリカ金融資本帝国から抜け出しました。日本もこの時にアジア地域帝国を構築するチャンスがあったのですが、日本は見逃してしまいました。次のチャンスに備え「地域帝国」のビジョンを作っておくべきだ、と高橋和夫は主張しています。
これは「ゼロ金利」「ゼロ成長」の定常状態を実現するために、日本が、先駆けて「地域帝国」実現しないといけない。そうすれば、ボスト近代の先頭に立つことができると主張しています。
そのためにも、政府の借金1200兆円を減らさないといけない。
日本が、こんなに借金があつても破綻しないのは、いまのところ民間と個人資産が国の借金を上回ってるからです。
いずれ国内の資金では国債の消化ができなくなってきて、外国に買ってもらわなくなったら、(国際的に)債務国家に陥り、破綻してしまいます。経済規模は違いますがギリシャがその例です。
1200兆円もの借金は見方を変えれば、日本はもう「サービス提供社会」へ変貌していると考えられるそうです。
国債への出資の見返りは、社会保障というサービスの配当を得ているとも言う訳です。しかし、このままでは破綻します。
日銀はもう既に2%の物価目標を取り下げたも同然です。異次元の金融緩和、ゼロ金利政策、国債ばかりかETFなどを買っても、金利はビクともしません。デフレ脱却は夢物語でした。
経済成長を前提とした政策は終焉していることに気付くのが遅か過ぎました。日銀は、とてつもなく膨張した資産をどうやって吐き出すのかに焦点が集まっています。
先日の米朝(金正恩・トランプ)会談が実現しました。不完全で曖昧な合意ながらも、韓国軍事演習中断など動き始めました。
史上とんでもないバカな大統領が出ないと、解決できない問題もあるのかも知れません。
このような状況の中では、「閉じた地域帝国」への進化へのチャンスは少ないばかりか、その役者もいません。100年先の展望でしか見渡せない、先の先の世界なのかも知れません。
「陸の国」から「海の国」へ時代が変化したように、「閉じた地域帝国」へは、まだまだ長い道程が必要なのかも知れません。