スニップ(一塩基多型)で解ること

ヒトゲノムの全解読ができたからといって、遺伝的な疾病などが解決できた訳でありません。逆に次々と新しいことが解って来て、解ったからこそまた新しい課題が出てきています。

アンジェリーナ・ジョリー
アンジェリーナ・ジョリー

覚えてらっしゃいますか?女優のアンジェリーナ・ジョリーさんが、乳がんの遺伝子検査で、BRCA1という遺伝子が見つかり、予防的に乳腺を切除したことがニュースになりました。(2013年5月)

次世代シーケンサー(NGS)が1台あれば遺伝子の検査は簡単にできるようになりました。一昔前は考えられなかったことが、今は起きるようになりました。

そもそもゲノム情報とは、DNA上に配列された4種の塩基、即ちA(adenine),T(thymine),G(guanine),C(cytosine)の塩基の順列組合せで、情報が書き込まれています。
ヒトのゲノムでは、約32億個もの塩基が配列るされています。
その32億個の中で、個人個人によって異なる情報は、0.1%程度の3百万個の塩基配列で決まっています。その他の99.9%の情報はヒトとして生命体であるための、普遍的な情報が書き込まれています。0.1%程度の3百万個の塩基配列のうち、たった1個でも違いがあると、遺伝的な差異として発現するのです。

例えば、血液型にO型、A型、B型、AB型の4種類がありますが、これは一塩基の違いで、多型(血液型)となって発現します。
これを一塩基多型いちえんきたけい(Single Nucleotide Polymorphism=SNP)と言います。SNPの読み方はスニップです。(複数SNPs:スニップス)

SNPs:遺伝子の基本的な塩基配列が同じであっても一つの塩基がほかの塩基に置き換わっている箇所があり、この部分のことをSNPs(スニップス)と呼ぶ。

もちろんスニップは遺伝します。母方、父方それぞれからDNAをもらい、一対の遺伝子として引き継いでいきます。
スニップの説明に、よく紹介される事例として、「酒に強いか、弱いか」という体質の差異について、スニップで説明されます。
即ち、ALDH2というスニップを持っているかどうかで、酒に強いかどうか決まります。
日本人は、GG型61.4%、GA型31.8%、AA型6.8%で、全く酒が飲めないAA型の人が6.8%もいるのですが、西欧人は、GG型が100%で酒にムチャ強い人ばかりなんだそうです。

他にも色んなスニップがあることが判ってきました。関節リューマチのリスクに関係したPADIや、心筋梗塞のリスクを高めるPRKCH、薬代謝の関連するチトクロームP450(CYP)などといったスニップが知られています。

その内スニップを調べることによって、「血圧高めでも、この程度のなら君は問題ない」とか、「肝機能のALT(γGPT)が低くても、君では問題だ」などと、個別にオーダーメイド健康診断ができるようになるかも知れません。

また、アンジェリーナさんの乳腺切除ように、癌の予防治療が積極的に行われるようになるかも知れません。

でも、スニップはもう少し複雑で、2~4個塩基パターン(マイクロサテライト)、数個~数十個のパターン(ミニサテライト)もあるようです。治療や予防には慎重な対応が必要です。もう少し時間がかかるかも知れません。

次世代シーケンサーが普及し、どんどん検査解析が進んでいますから、その結果Dataも増え、今やData Base化されています。
Conectivity Map(C-MAP)というDataBaseが公開されいます。登録してログインすれば誰でも利用できます。

例えば、薬が効く、効かないといった遺伝子の有無と所在や、遺伝子の発現を調べるのに使われているそうです。そして新たな薬効が見つかることもあります。
例として、肺癌の転移を抑えてくれるような薬として、心不全の薬だったカルペリチドが効くようだとか、前立腺癌の抗癌剤耐性を阻止する効果が、C型肝炎の薬リパビリンが効くだとか、新たな薬効が判ってきています。
また、薬の副作用(Drug Repositioning)の研究にも役立ってきています。

日本人の肝臓癌は、遺伝子の異常の起きかたによって6つに分類できるそうで、手術後の患者の5年後再発率や、死亡率も15%から100%と大きく異なることもスニップで分かるようになってきたそうです。(国立がん研究センター等の研究)

自閉スペクトラム症の多くは、胎児の段階で神経の発達に関わるCHD8というスニップの異常によることが分かってきたそうです。(九州大学の中山敬一教授ら)

近い将来、健康診断ではなく、遺伝子による体質診断を受けることになるかも知れません。
でもボクたちの体は、遺伝子で全て決定づけられてないことが判ってます。もちろん生活習慣も体質改善に影響がありますが、それ以外エピジェニティクスepigeneticsという、後天的な要因による遺伝子発現を制御することもあります。

今回はこのくらいにして、YouTubeに「驚異の小空間『細胞』~大きく発展をとげた生命科学の10年~」というよく纏まった、解りやすいビデオがありましたのでご紹介させていただきます。

ゲノムに関しては、書籍より動画の方が解りやすいと思います。
但し、30分ほどかかりますのでお暇な時にでも視聴して下さい。後半部分はエピジェニティクスepigenetics、タンパク質、ES細胞、iPS細胞などの紹介があります。少々難しいところがありますが、勉強になると思います。

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