デジカメ本体に比べれば、レンズの歴史は古く、はるかに長い歴史があります。レンズは望遠鏡や顕微鏡と共に発展し、その歴史はカメラが生まれるずっと前に遡ります。
そして今もレンズの役割は終わっていません。カメラのレンズについて、調べれば調べるほどわからないことが多く、なんとなくだった知識を調べ、確かめてみようと思いました。
ですから、これはレンズの基礎知識の一丁目一番地であります。
カメラ用レンズは19世紀に入って急速に発展しました。それは、戦争の兵器として発展した歴史でもあります。でもここでは戦争には触れません。
35㍉フィルムもライカの技術者であったオスカー・バルナック(Oskar Barnack) によって生み出されたものです。
ライカが生まれたのは、このバルナックライカからと言われるほどです。
バルナック氏が両手を拡げた一尋の長さをフィルムの長さと決め、これが36枚撮りの35mmフィルムとなったそうです。
カメラやレンズは、19世紀ドイツの技術者によって発展してきました。カール・ツァイス氏(Carl Friedrich Zeiss 1816-1888)やツァイスの技術者エルンスト・アッベ氏(Ernst Abbe 1840-1905)、さらにオットー・ショット氏(Friedrich Otto Schott 1851-1935) この3氏によってドイツは光学の国になりました。
レンズの歴史に面白い逸話があります。
ツァイスのライバルだったエルンスト・ライツ社(Ernst Leitz, Wetzlar: 1850年設立)も高い技術力をもった会社でしたが、3波長による色収差補正したアポクロマートレンズの顕微鏡をツァイスが発表したときは「いよいよ自分たちの会社(ライツ)も終わりかと思った」そうです。(2線の光学収差補正を行ったレンズをアクロマート、3線で光学収差補正を行ったレンズをアポクロマートと呼んでいます)
しかしツァイスのアッベは敢えて特許を申請せず公開したことで、エルンスト・ライツ社もアポクロマートの顕微鏡を製造することができるようになったのです。
こうしてドイツは20世紀光学の国となった歴史をつくりました。
そもそもレンズは妥協のたまものと言われてます。レンズには収差(Aberrations)が付きものであって、もともと光は波長によって屈折率が違いますから、色ズレ(収差)が発生します。
色収差は単独のレンズでは解決できないため、性質の異なる2枚のレンズを貼り合わせて補正します。中でもニコンが独自に開発したED(特殊低分散)ガラスを使用したEDレンズは、色にじみを良好に補正し、特に高倍率で威力を発揮します。
EDレンズより分散性が小さいUED(Ultra Extra-Low Dispersion/特殊低分散)レンズが開発されています。
単色でも収差は発生します。収差との戦いがレンズの歴史だそうです。
サイデルの5収差までは専門家ではないので割愛しますが、球面収差がもっとも大きいので、この補正は欠かせません。
次にレンズの解像力(Resolving Power)を表すものに、MTF曲線 (Modulation Transfer Function Curve)といったものが表示されることがあります。
横軸に解像力の周波数成分をとり、縦軸にコントラストのレスポンス(強度レスポンス)を取ったものです。
①の理想的なレンズをめざして、レンズは開発されてきました、初期アポクロマートの逸話も、こんなレンズの苦労話しのひとつであります。
デジカメの時代に入っても、固体撮像素子の画素サイズがレンズの解像力よりも遙かに細かいため、レンズの性能が画質を左右しているようです。
特に、4umサイズのCCD 素子では、レンズに250本/mm以上の解像度が要求されるので、こうしたレンズを作るのは恐ろしく困難なのだそうです。
また、4um画素の素子にレンズの情報を集めようとすると回折という問題が起きて、これを考慮したレンズを使用しなければなりません。
つまり、レンズの絞りがF/4以上になると回折により4umのボケとなるために、レンズはそれ以下の明るい口径比で使わなければならなそうです。
この観点(レンズの解像力の観点)からすると、一般の固体撮像素子では1画素4umが限界ではなかろうかと言われています。
さてレンズも撮像素子に対応して、進化が求められようとしています。
まだうわさ話だそうですが、Sonyがマイクロフォーサーズ向けに3200万画素のセンサーを開発しているとか、シャープが8K対応のマイクロフォーサーズ(アスペクト比を考慮すると4000万画素級の画素ピッチとなるはず)を発表する予定だとか、ニュースが賑わってます。
画像センサーの開発はまだまだ進みそうで、それに合わせたレンスも進化しそうです。楽しみになってきました。
参考にしたサイト:光と光の記録 — レンズ編
参考にした書籍:
カメラとレンズのしくみがわかる光学入門(インプレス 安藤幸司著)