ワーグナーとユダヤ人のわたし(Wargner&Me)

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NHK BSで、Wavelength Films2010制作のワーグナーとユダヤ人のわたし(Wargner&Me)という番組を見た。英国気質が漂い、ユダヤ人がワーグナーを紹介するという、ある意味とんでもない作品(番組)です。

Stephen Fry
Stephen Fry:イギリスの俳優、作家、ジャーナリスト、コメディアン、司会者、映画監督

スティーブン・フライ Stephen Fry自身が進行役として登場しWargner&Meという番組を進めます。Me=彼自身はユダヤ人で、ワーグナー大好きなワグネリアンです。この番組が商業的ではなく、彼の真摯な思いが伝わってきました。

もちろんバイロイト Bayreuthは、過去の歴史抜きに語ることは今後もないでしょう。天才音楽家の聖地と見る人もいれば、ドイツの暗黒時代を想い起こさせる場所と見るひともいます。
しかし、ワーグナーの音楽はヒットラーが想像していたよりもはるかに偉大でした。そしてワーグナーの長年の夢であった祝祭劇場があるバイロイトもその事実によって、名誉を回復しました。ですから私は、ヴァーグナーもバイロイトもに譲るわけにはいかないのです。

バイロイト祝祭劇場 (Bayreuther Festspielhaus)
バイロイト祝祭劇場
(Bayreuther Festspielhaus)

バイロイト祝祭劇場(Bayreuther Fest spielhaus)はワーグナーが自身の作品を上演する目的で、自ら計画、設計したものです。そしてワーグナーのパトロンであるルートヴィヒⅡから1/2の資金を得て、1876年に完成しました。
現在も、毎年7月末〜8月末の約1ヶ月に渡ってバイロイト音楽祭が開催され、ワーグナーのオペラが演奏されます。7年も待ってチケットを手に入れたワグネリアン憧れの聖地です。

最初に上演された作品は、超大作の『ニーベルングの指環”Der Ring des Nibelungen”』でした。この4部作は4日間で18時間近くに及ぶもの、ワーグナーがスイス亡命中での、赤貧の生活の中で構想をねってから26年が経っていました。

ワーグナーを好んでいたヒットラーは、1923年に初めてバイロイトに訪問しています(この頃ヒットラーはまだ伍長だった)。
ワーグナー自身、反ユダヤ的論評を出したこともあり、没後ワーグナー遺族とヒットラーとの親密な関係もあり、ヒットラーによってバイロイトが擁護された歴史を持っています。
バイロイトはワグネリアンにとって夢であり、憧れなんですが、ユダヤ人のスティーブンにとっては、バイロイトでワーグナーを聞くことに複雑な気持ちを抱くことは当たり前なことなんです。

また、かつてナチスの党大会が盛大に開催されたことで有名なニュルンベルグNürnberg、そのナチス党大会の会場だった所を背景にスティーブンは語りかけます。党大会の前夜にまさにニュルンベルグのマイスタージンガー Die Meistersinger von Nürnbergが上演されたと…

ナチスはワーグナーの壮大な音楽がもつ感情を動かす力を悪用したわけです。
ヒットラーはワーグナーの一面だけをみていたのに、私たちはヴァーグナーの中のヒットラーにばかり目を向けがちだ。
ヒットラーがワーグナーを異常なほど好んだために、私たちはヒットラーを通してワーグナーを見てしまう。巨大なワーグナーのほんの一部に目を奪われ全体像を見ようとしていないのではないか。

ノイシュヴァンシュタイン城  Neuschwanstein
ノイシュヴァンシュタイン城(画像PopUpします)
Schloss Neuschwanstein

いろいろ批判もあるでしょうが、ルートビッヒⅡというバイエルン国王をパトロンにしていなければ、ノイシュヴァンシュタイン城の宮廷劇場も、バイロイト祝祭劇場も出来なかったし、

ニュルンベルグのマイスタージンガー』も『ニーベルングの指環』などのオペラも無かったと言えます。

では、有名な『ニュルンベルクのマイスタージンガー』第1幕への前奏曲(9’28”)をお聞きください。ワーグナー入門の名曲です。