日頃、ポピュリズムとは何かということを考えていた。特に熱狂するポピュリズムが戦争を引き起こすことになったのではないかという疑問がある。
ポピュリズムと歴史的背景
デモクラシー(Democracy)は主義ではなく制度だが、かつてdemocracyを「民主主義」と誤訳してしまった。また、ポピュリズムを「大衆迎合主義」と誤訳してしまったようだ。
ポピュリズムとは自己の意見や立場を熱狂的に主張し、強要しようとする政治的傾向を指す言葉である。今の日本でも、その勢いが増している。
かつてドイツのナチスも選挙で政権を握った。ヒトラーは「偉大なドイツの復活」を叫び、純血アーリア人種の優位性を唱えた。それがユダヤ人の大量虐殺へとつながっていった。現代的に言えば、排他主義でありポピュリズムの一形態であった。
日本でも皇紀2600年(1940年)に「八紘一宇」をスローガンに掲げ、大々的な記念行事を行った。このスローガンは天皇の下に世界を一つにまとめる意味を持ち、日本の侵略を正当化し、太平洋戦争への突入を後押しした。
過去の歴史がそのまま繰り返されることはない。しかし、歴史を知る者は同じ過ちが再び起こり得る危険性を認識している。
現代の台頭と日本の状況
ポピュリズムの最初の顕著な例は英国のBrexitだろう。2016年の国民投票でEU離脱が決まり、2020年に正式に離脱した。
その後、欧州各地で極右政党が相次いで台頭した。
- フランスの国民連合(Rassemblement National)
- ドイツのAfD(ドイツのための選択肢)
- オーストリア自由党(FPÖ)
- オランダ自由党(PVV)
現在、米国ではトランプ氏が再び「アメリカ・ファースト」を掲げ、排他主義と分断を助長する政策を推進している。
日本でも「ジャパン・ファースト」を唱える政党が台頭。
衆院選では新興の参政党が大躍進を遂げた。
関西・大阪では日本維新の会が優勢を示し、東京では都民ファーストが都議選で勝利した。こうした動きは、グローバリズムを掲げ相互扶助を訴えてきた従来の政党の勢いを失わせている。
今、平衡主義と極右主義、グローバリズムとマイ・ファースト、平等主義と排外主義の対立軸が複雑に交錯している。「ポピュリズムはデモクラシーを脅かす害悪だ」と一方的に断じることはできないが、何かがおかしいという危機感が広がっている。
ポピュリズムとは何か
仏のツヴェタン・トドロフは、
ポピュリズムとは伝統的な右派や左派に分類できるものではなく、むしろ「下」に属する運動である。既成政党は右も左もひっくるめて「上」であり「上」のエリートたちを「下」から批判するものだ。…と言っている。
興味深いのは独のAfDである。ナチ台頭という歴史への反省から、急進的主張に対する拒絶姿勢が強かった独が、ユーロ危機とEU不信の中で「ユーロ解体」という経済・通貨面の主張を掲げる政党として登場した。
そして移民・難民問題、イスラム過激派のテロといったドイツを揺さぶる問題に対し、政府や主要政党と対決する形で支持を広げてきた。
ポピュリズムは「ディナーパーティーに来た泥酔客」のようなものだ。デモクラシーという品の良いパーティーに出現した泥酔客もようなもので、パーティーの多くは乱暴な発言をするこの泥酔者を歓迎しないだろう。
腐敗した既成政党、一握りのグローバル・エリート官僚に対する批判として、サイレント・マジョリティー(沈黙する多数派)の不信感が、ポピュリズム政党を生んだ。
「民主市議の病理」「カリスマ指導者」「討議ではなく喝采」を浴びてポピュリズムは急進的に出現したといわれている。
戦前回帰の懸念
「新しい戦前」という言葉は、タモリ氏が2022年末の『徹子の部屋』で「来年は新しい戦前になるんじゃないでしょうか」と発言したことをきっかけに知られるようになった。
現在の日本社会は、大正デモクラシーだった戦前を彷彿とさせる、そして不安定で不確実な時代となっている。
以下の要素が重なり合い、戦前のような状況が再来するのではないかという懸念が高まっている。
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- 新型コロナウイルス感染症の長期化や気候変動問題など、将来の見通しが立たない状況
- 社会の分断:価値観の多様化や意見の対立が深まり、社会全体が分裂状態に陥っている
- 国内政治の動向:防衛費増額や敵基地攻撃能力の議論など、平和主義からの転換を思わせる動き
- 国際情勢の悪化:ロシアのウクライナ侵攻、米中対立の激化、台湾を巡る緊張など、地政学的リスクの高まり
曲解された日蓮主義
日本の軍部によって引き起こされた太平洋戦争の源流をたどれば、満州事変である。満州事変を主導した石原莞爾や永田鉄山など関東軍が作った。その軍国主義が太平洋戦争を招いた。
作家・佐藤優氏は創価学会機関誌のインタビュー記事〈戦後80年〉特別対談〈上〉 作家・佐藤優氏×歴史小説家・安部龍太郎氏で、次のように指摘している。
初代会長の牧口常三郎先生と同時代を生きた人物に、日蓮主義者の田中智學(注)がいます。「八紘一宇」という言葉は田中によって造語されました。その田中を仏教の師と仰いだ石原莞爾(注)は、いつしか日蓮主義をねじ曲げて解釈し、海外侵略を正当化するイデオロギーを生み出しました。
同じく日蓮の思想を深めた牧口会長が、日本の軍国主義に抗して投獄されながらも、平和の信念を貫いた一方で、石原のように極論を唱えた人物もいたのです。
もっとも正しい真理のすぐ横に、もっとも危険なものが潜んでいる。注)
田中智學:1861年~1939年。日蓮宗(身延派)の僧侶として得度後、還俗し立正安国会・国柱会などを組織。国家主義と結びついた日蓮主義を広め、『宗門之維新』などの著作で日蓮系の僧俗に大きな影響を与えた。石原莞爾:1889年~1949年。陸軍軍人。満州事変を主導し、国柱会にも参加。田中智學の思想的影響を受け、『最終戦争論』などの著作がある。
いったん制度化された体制の下では、我々は、もう何も為す術がありません。そしてある時「止むにやまれない事由」によって戦争は始まる。それが庶民の感覚です。
参政党とはどんな党
神谷氏が代表する参政党がどんな党なのか、あまり知られていない。その主張が知られていないのに、参院選では大躍進した。
- 「天皇を中心とした国家」謳う
- 「教育勅語」の尊重
- 「日本人ファースト」「外国人排斥」
- 「反グローバリズム」
- 「オーガニック信仰」
- 「ワクチンは殺人兵器」
- 「ONE PIECE」神谷宗幣
- 「ネット保守」政党
参政党の支持者が熱狂する光景をTVで見てゾッとした。
戦争を引き起こしてはならない
何が真理か?微妙な時代の変化の中にある「真理」を見逃してはならない。
あの戦争は、熱狂する喝采、軍国主義によって組み込まれた制度の中で、止むにやまれない事由によって、引き起こされた。
安倍政権は「国民の生命と財産を守る」と謳った。公明党は「国民の命と生活を守る」といっている。
財産と生活のニュアンスの違いは重大だ。財産に固執する自民党は金権政治から離れられなかった。
庶民感覚で、真剣に諸問題に取り組む公明党は、与党でありながら自民党とは、はっきり一線を画すところがある。とりわけ戦争にに関する議論では明確だった。すなわち拝金教、出世教、ナショナリズムである。
2014年、集団的自衛権の議論が盛んだった。安保法制化に思う、日本の役割りについて集団的自衛権の議論についても何回かこの投稿で意見を書いた。
「平和」という一点を見定めていかなくてはならない。
読売新聞の世論調査(8/22,23)で参政党の支持率が12%で、野党トップに躍り出た。