「年を取るってことは、こういうことなんかね~」とアラナイの母はよく言います。しだいに老いていくことも、その人にとって初めてのことばかりなのです。
加齢による症状は様々で人によって違います。また病気とも違い、老化は治せません。そのことを一寸考えてみましょう。
老化の要因の一つは、ホメオスタシスの不全です。これはギリシャ語で、ὅμοιοστάσις と書きます。「常に一定の状態を保とう」とする体の機能、すなわち生体恒常性を指します。
体の水分が減ってきたら喉が渇く、栄養が足らなくなったら腹が減る。実はこの当り前のことが健康でいられる理由なのです。
つまりホメオスタシスのお陰で、自律神経、内分泌(ホルモン)そして免疫力のバランスが整って自然治癒力も生まれるのです。
ホメオスタシスが損なわれると、①交感神経と副交感神経のバランスが崩れ、②ホルモンはストレス状態に対する防御力が限界を超えてしまったり、③免疫の働きが弱まったりします。
どうもこのホメオスタシスが、老化とともに上手に機能しなくなってくるのです。
何の理由もなく血圧が急に上がったり、体全体が冷えたり、不眠症になったり、目眩がしたり様々な異変をきたします。これが加齢による老化と言うのでしょう。
ホメオスタシスは、外部からのストレッサーに影響されますから、なるべく平穏、平静な生活が良いわけですが、なかなかそうは行きません。ストレスと上手く付き合う方法を自ら見つけ出さなければなりません。
もう一つ、アポトーシスといった現象が老化に関わっています。アポトーシスとは、やはりギリシャ語でαπόπτωσις と書きます。「(枯れ葉などが木から)離れ落ちる」ことを意味しています。
少々難しくなりますが、個体をより良い状態に保つために積極的に引き起こされている、管理・調節された細胞の自殺です。
即ち、生体にもともとプログラムされている、細胞の死に方の一つです。生物の細胞を管理するために自動的に行われています。ヒトは毎日3000億個の細胞が死んでいきます。死があることによって細胞組織は維持されているのです。
皮膚は28日、赤血球は3ヶ月、肝臓は1年で新しく生まれ変わります。キズを持った遺伝子を消去するために、集団的に細胞組織が死滅することが最近解ってきたそうです。
これはアポトーシスによって組織ごと集団死することで、傷ついたDNAを消去しているのです。
遺伝子のテロメア(telomere)が決める寿命とは違って、組織の集団死のプログラムです。これは大変重要で高度なものだそうで、有性生殖生物の特有なものと言われてます。
高等生物にしかない有性生殖システムは、死が前提になっていたことが説き明かされています。
老いの先に死があるのですが、遺伝子や細胞組織レベルの死について研究が進んでいます。「死」を条件にしたのが「生」であり、「生」の条件は「死」を前提にしているのです。
老いに逆らっては自然ではありません。まず受容するよう心がけることが大切です。
「まだまだこれしきのこと」と勇んで無理な挑戦をすべきではないのですが、一方で人生は「絶えざる闘争」の異名ですから「挑戦」を忌避がってはなりません。
「生涯挑戦」の気概が、若々しく見せます。さてどのように「挑戦」するか? ここが大切なところなのかもしれません。