エイジング・パラドックスを考える【長文】

この記事は3年以上前に投稿された古いものです。

人は誰しも年をとり、老人となることにあらがうことはできません。
爺さん、婆さんと呼ばれるのを拒むのはみっともない気がして、いつしか老人となることを受容するようになります。
これを自らの老いを自覚する老成自覚と呼びます。心も体も自然に老いて行って、老人になることを受容することは大切です。
サクセスフル・エージング(Successful Aging)として、心身ともに統合力を発揮するための知恵なのかもしれません。

高齢になると喪失を多く経験します。友達が先立ち、配偶者に先立たれ、自身も健康を損ねて自由が効かなくなります。
にも拘らず、心理的には幸福感に包まれる時期だといわれます。
長生きするほど幸福感が増すことを、エイジング・パラドックス(Aging Paradox)と言います。

人生はまだまだ無限の時間があると認識しているときは、人は情報を集め、自分の世界を広げ、社会関係を求めることへの動機づけがたかまります。しかし、人生に残された時間が限られていると認識すると、情報や金銭的なものへの執着が低下し、逆に情動的な満足を求めるような動機づけが高まります。そして既存の社会関係を深め、豊かな人生を味わおうとするようになります。このような加齢による動機づけの変化によって、高齢期にもウェルビーイングは安定している傾向がある。(Aging Paradoxは、carstensen,1995 の社会情動的選択性理論で説明されました。)

人間は、幼児期と終末期が一番幸せだと言います。 これをAshton Applewhiteは「幸せのUカーブ」と言ってます。

収入が何だ!豪邸が何だ!美貌が何だ!学歴が何だ!そして健康を害してもそれが何だ!といった気分。

健康寿命が尽き、身体的機能や認知機能が低下したとしても、それに打ちひしがれるのではなく、良いことや変わらぬことに意識を向けて行くことができます。
ありがたく、幸せに感じることで、人は心理的に適応していくのかもしれません。言い換えれば、生涯を通して人は主体的で能動的に適応してゆけるものなのです。

  1. よいことがあると、他の人のおかげだと思う。
    周りの人の支えがあるからこそ私は生きていける。
  2. ひとりで過ごすのはつまらない。(反転項目)
    ひとりでいるのも悪くない。
  3. 私の気持ちは昔と今を行ったり来たりしている。もう死んでもいいという気持ちと、もう少し生きていたいという気持ちが同居している。
  4. 生かされていると感じることがある、ご先祖様とのつながりを強く感じる。
  5. つい見栄を張ってしまう。(反転項目)
    過去のことでまだこだわっていることがある。(反転項目)
  6. 振り返ってみると「自分はよくやってきた」と思う。自分の人生は意義のあるものだったと思う。
  7. 人の気持ちがよくわかるようになった。
    昔より思いやりが深くなったと思う。
  8. できないことがあってもくよくよしない。細かいことが気にならなくなった。

 



生涯発達心理学では、成長も老化も「発達」として捉えます。
児童青年期(First age)、親から独立して社会的責任を担う成人期(Second age)、社会から引退し年金生活となる時期(third age)その次に来るのが超高齢期(fourth age)と言われています。
一般に超高齢期(fourth age)は85歳前後からの世代だとされています。最近、超高齢期の方が多くなって関心を集めています。

morituyoshi

森毅先生の「人生三回説」というのに共鳴し、老年の自立として第三の人生、自由人として振る舞うつもりでしたが、超高齢期の第四の人生が待っていました。

発達心理学では、バルテスBaltesによる生涯学習の獲得・喪失モデルが有名です。発達を心身の形態と機能に関する獲得(Gain)と喪失(Loss)の相互作用によって進行すると捉え、各段階のモデルの頭文字をとってSOC理論(Lossbased Selection, Optimization, Compensation)即ち「補償を伴う選択的最適化」といってます。
難しいのでよく引き合いに出される事例を紹介します。

80歳の著名なピアニスト、ルビンシュタインに「どうすれば、いつまでも素晴らしいピアニストでいられるのか?」質問し、その回答を分析した有名な事例です。

  • Lossbased Selection(選択):演奏する曲のレパートリーを減らす。
  • Optimization(適正化):少ないレパートリーに絞って、その練習の機会を増やす。
  • Compensation(補償):指の動きのスピード低下を隠すためにテンポに変化をつける。

 

年をとると、社会的な人との繋り、精神性(Spirituality)、幸福観、宗教観などが楽天的気質にとって重要になってきます。

楽観主義と悲観主義者(ウラジミール・マコフスキー)

昔「人生50年」と言ってました。今では人生50年は折り返し地点です。
ミリオネア(100歳以上)となっても珍しくなくなりました。
これに伴って超高齢期の研究も進んできました。

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