
祖母スマ(75才)
若かった頃の自分の話からはじめる。東京の大学に入ったとき、叔母の葛飾の家に厄介になった。叔母の家に祖母も一緒に暮らしていた。祖母スマは亀戸のチャキチャキの江戸っ子であった。岐阜の田舎から出てきた田舎者(自分)にとって、東京は江戸っ子の粋な都会に映った。
その頃、58年も昔(1968年)の葛飾辺りでは、まだ江戸下町の風情が残っていた。
朝一番にアサリや豆腐の物売りの声で目覚めた。そして何よりも祖母の喋り方が、江戸言葉そのもので粋で軽妙だった。江戸言葉に触れて新しい生活が始まった。何もかも全て新鮮だった。そんな若かりしときの経験を持っている。
姥玉みっつ (潮文庫)を読んで江戸っ子の掛け合いのような言葉に、昔 祖母の話し方を思い出した。今では東京の落語でしか聞くことが出来ないが、江戸っ子の粋な言葉遣いは良いものである。
江戸下町の掛け合いを見事に描いている小説 姥玉みっつに のめり込んで、あっという間に読んでしまった。
江戸下町を舞台に、個性豊かな三人の婆たちの日常とその周りで起こる事件をコミカルに描く「女性の老後」がテーマの長編小説です。
名主の祐筆(文書や記録を取り扱う職)の職を得て、お麓は「おはぎ長屋」住まいに、静かな余生を過ごすつもりでいた。だが、その平穏な暮らしはわずか一年で終わりを迎えた。幼馴染の お菅が越してきて更に半年後、お修がやってきたのだ。
二人の幼馴染は、お麓の長屋を毎日訪ねてきては、心底どうでもいい話をしゃべり散らす。お麓はこの先二人とうまくやっていけるのか。安穏に暮らすはずの余生はどうなってしまうのか。更に、行き倒れの女とその子供 へと事件は続き、巻き込まれていく。これら軽妙で粋な江戸言葉で展開されていく。
この著者、西條奈加は東京(江戸)の出身ではない。北海道は池田町の出身というから驚いた。
しかし 江戸っ子はだしの口調で描くことができたのは、東京に親戚でも居たのだろうか?身内に東京出身のの者がいたのだろうか?でなければこんなに生き生きとした江戸の言葉を描けやしない。読者を面白がらせるほどの流暢な江戸前なのです。
入念に下調べして小説を書いてるに違いないが、庶民の時代小説の面白さに圧倒されてしまった。
続いて、直木賞受賞した代表作 心淋し川も読んでみた。
江戸下町、千駄木の一角に心町と呼ばれたところに、心淋し川と呼ばれる小さく淀んだ川が流れていた。
そのどん詰まりに古びた長屋が建ち並び、そこで暮らす人々も、また人生という川の流れのどん詰まりに居た人々である。その人々が見せる真の姿と、それでも蘇る物語なのです。
この小説は全六話の連作短編の形で、周到に練り上げられた筋書きの時代小説です。 どん詰まりの人生から蘇る庶民の喜劇とでもいったらいいでしょうか?読み応えのある小説でした。
特に第3話「はじめましょ」では、どん詰まりの人生の蘇生喜劇です。庶民の力強い生き方を観るようで嬉しくなった。ともあれ西條奈加さんの小説は、庶民が主人公で、喜劇の楽観主義が貫かれているようにおもえます。そこが気に入った。
庶民の時代小説の面白さから、庶民の喜劇が面白くなって、もう少し西條奈加さんの小説を読んでみようと思っている。庶民こそ最高!楽観主義でいこう!

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