租税回避を放ったらかしていいのか?

この記事は3年以上前に投稿された古いものです。

この本の表題が凄い。<税金逃れ>の衝撃 国家を蝕む脱法者たち、これだけ読めばまるで週刊誌だが、この著者:深見浩一郎氏もよほど頭にきてこんな表題にしたんでしょう。

「グローバル・ガバナンスが求められる時代」の投稿ネタの新聞記事を書いた深見氏の著書です。
モリパパも憤りを感じる税金逃れであります。

あなたは許せますか? 世界の1.7%の富裕層が、世界の富の41%を占めていることを!

マイナンバー制(国民総背番号制)導入で、国民一人ひとりから完璧に税金を取り立てる仕組みができるのに、企業からの税収喪失を放ったらかしにしているのです。これが実情です。

Apple社のクックCEOは、米議会の公聴会(2013年)でこう言ったんです。「われわれは、最後の1ドルまで課せられた税は、全て支払っている」…だとさ。
Apple社は本来69億$(8280億円¥120/$換算)払うべきところを、25億$(1725億円)とし、44億$(3036億円)節税したそうです。
もはや脱税です。参考:アップル vs G20 節税巡る果てしなき攻防
Googleだって31億$(3700億円)も節税したそうです。

今や税は企業にとってコストだと見られています。多国籍企業は殆ど無国籍企業となり、租税回避スキームを徹底的に調査して、コスト削減を果たしている訳です。どのような租税回避スキームなら節税(脱税)できるか?優秀な経理士が対策を究明しているという訳です。

税は取りやすいところから取るなんて、昔話じゃありませんよ。
昔は、重い年貢に耐えかねた農民が一族郎党引き連れて逃散ちょうさんしたんですが、今や企業は租税回避スキームを駆使し、大富豪や富裕層はオフショア(Off share)市場やTax Haven租税回避地逃散ちょうさんしてしまう時代です。(Tax Havenは、heaven天国でなくhaven避難所が正しいそうです)

前にも書いた通り、日本で租税回避された金額がなんと20兆円なんです。消費税に匹敵する金額と聞いては、著者の深見氏ならずとも、頭にきますよ。

もちろん、OECD もEU も放ったらかしにしてはいませんが、なかなか旨い規制方法が無いようです。知恵比べといったところなのでしょう。

また個人レベルの税回避もあります。大富豪や一部富裕層では金融斡旋機関を通じて、租税回避地(Off share)へ資産を移したり、信託を介して節税をしています。
5千万円以下の海外資産は届けなくてもOKなので課税されません。

個人所得には二つあります。勤労所得と金融所得であります。
サラリーマンは勤労所得で、給与から源泉徴収され税を逃れるすべはありません。
しかし、富裕層の所得の殆どは、金融所得(いわゆる不労所得)です。金融斡旋機関によってお金は世界中何処へでも移動でき、オフショア市場を活用し国内での課税を巧みにすり抜けているのです。

新自由主義による、税のフラット化によって、所得税、法人税の累進性が削がれ、逆進性の強い消費税、相続税に依存する比重が高くなってきています。
本来、社会的な負担増を引き受けるべき富裕層や企業は、逆に優遇される傾向がますます強くなっています。

公明党が主張する消費税の軽減税率は、こういった税のフラット化を少しでもやわらげようとする狙いがあります。
かつて、消費税導入時に物品税が撤廃されてしまい、逆進性が進みました。今回、軽減税率を導入しないと、逆進性はますます強まってしまします。

「大富豪は代々大富豪に、貧乏人は代々貧乏人」そんな新自由主義の世界へ走るのは、アメリカだけではありません。現代日本も、税のフラット化が進んでいます。これで望ましいのでしょうか?

貯蓄税、資産税、出国税などの検討も必要かもしれない。いつの日か、国際税務機構のような機関ができ、国際的な課税ルールによって、租税回避ができない世界の実現を期待したい。

著者の深見氏は「おわりに」でこう書いています。

世界の各国が真にグローバルな社会として一体化する「時代の胎動」が聞こえてくるようだ。
この分野は現在進行形のテーマであるため最新の全貌を伝えることは難しく、本書も再三書き直しを繰り返し、まことに難産だった。

ゆえに、こういったテーマをもう少し深掘りして取り上げて欲しい。ニュースにも取り挙げてもらいたいものだ。