移民の時代

この記事は3年以上前に投稿された古いものです。

今年(2018年)第1四半期(1~3月)の難民申請者(速報値)は3,015人で、前年同期から464人減ったとニュースで報じられました。
先にブログで難民と移民について書いたとおり、「難民申請すれば、就労ビザがもらえる」と誤解され一時申請者が増えたのですが、その後(20181.15)、法務省が厳格化したために、今度は難民申請が減少したのでしょう。しかし、問題の本質はこんなところにはありません。

西日本新聞社編の「新 移民時代」 を読みました。これは西日本新聞が2016年12月からキャンペーン報道してきた「新 移民時代」を再構成して出版(2017.11)されたものです。

移民鎖国ニッポンは「移民流入」世界4位、15年39万人、5年で12万人増の今や大変な移民流入国になっているのだそうです。
実は、発展途上国の安価な労働力で穴埋している日本経済の歪みが垣間みえるというのです。

呑気に「働き方改革法案」で、高度プロフェッショナル制度について云々してる場合じゃないような気がします。
2016年末の時点で、日本に暮らす外国人は、238万人に達するそうです。もう60人に1人は外国人だという数字です。あなたの周りにも外国人がいらっしゃると思います。
この問題に目をそらしてはいけないところまで来ているのです。

過去最多の移民を抱える日本になりました。移民がいるのにいないふりをする「移民ネグレクト」。それが今の移民鎖国ニッポンなのです。「出稼ぎ留学生」や「偽装難民」「外国人技能実習制度」を見て見ぬふりをしてはいけません。

「留学生30万人計画」も「外国人の技能実習制度」も、建前は国際貢献です。しかし、日本は人口減少と超高齢化で人手不足が深刻化するなか、発展途上国からの安価な労働力で穴埋めしたいというのが本音のところなのです。

「出稼ぎ留学生」が働く、宅配の配送センター、コンビニ弁当の製造ラインなどの単純労働の職場では、人手不足が特に深刻になっています。そこに「出稼ぎ留学生」が入っています。
留学生は週28時間以内という労働規制がありますが、それを超過して働かないと暮らせません。過酷な労働を強いられています。

何故でしょう? 日本の専門学校とタイアップした日本語学校が、紹介料を払っても、留学生を募っている留学ビジネスがあるのです。
途上国の日本語学校は、紹介料を受取って成り立ってます。
留学生は、大きな借金をして来きています。その返済のために、日本でアルバイトをしなくてはならないので

「技能実習生」についても問題があります。
3年で帰国しなければならない制約があり、転職はできません。安い賃金、きつく過酷な待遇でも、他へは移れないのです。

現実は3K(きつい、きたない、きけん)職場しかありません更に、職場での暴力、賃金の未払いなど、日本人が嫌う職場しか無いのが実情なのです。

また、介護の職場では必要な語学レベルを規定していて、漢字が書けることまで要求しています。介護資格を取るには国家試験まであって、これまでに何人かの極めて少数しか受け入れてきませんでした。

外国人にも優しい社会、即ち「他者に寛容な社会」でなくてはなりません。言い換えれば「他人の不幸の上に自分の幸福を築かない 」こと、そのことなのです。
かつて戦前の日本の軍部ように、満州を隷属させ、朝鮮を植民地化し、更に大東亜共栄圏の盟主として、アジアを侵略した歴史を二度と繰り返してはなりません。

我々は、異文化に不寛容なままでは居られなくなりました。来日しているのは労働力ではなく「人間」です。
見て見ぬふりをする姿勢が、この日本の混迷を深くし、活力を失わせてしまいます。

先日こんな記事を眼にしました。

政府は、5年間を上限に日本国内で就労できる新たな在留資格を設ける方針を決めた。最長5年間の「技能実習」を終えた外国人や一定の技能を身につけた外国人が対象で、人手不足に悩む建設や農業、介護などの5分野での労働力確保が狙い。来年4月の導入を目指しており、今秋の臨時国会にも入管難民法改正案を提出する。(2018.5.30 毎日新聞より)

ますます、外人労働者にたよらざるを得ない日本なのです。でも、この30万人の受入れ程度では、将来、どうしよもないほど、日本の人手不足は深刻になるでしょう。

最近、NHKの「縮小ニッポンの衝撃」という番組を見ました。

日本の人工ピラミッドは、2050年の棺桶型になるそうです。

労働力不足の穴埋めに外国人技能実習生が注目されています。
昨年(2017)、128万人もいたそうです。

番組では岡山県美作市みまさかしを例に、高齢化への取り組みを紹介していました。
棺桶型となった美作市の高齢化の対策として、外国人の技能実習生・採用の取り組みを取材しています。

番組の最後に、サセックス大学のロナルド・スケルトン名誉教授(人口学)が、インタビューに応えて解説していました。

日本はこれほどの高齢化に直面していながら、移民を受け入れていない。特異な国です。均質な社会や純血主義は、政治的にも社会的にも魅力的に見えるでしょうが、そんな社会はあり得ません。日本がこの難局をどう乗り切るのか、世界中が固唾をのんで見守っています。

エマニュエル・トッドもこんな言い方をしてました。

私がはじめて日本に来たのは20年前。そのころから人口減少は大きな問題になっていました。私は初め日本人ならなんとか対応できると楽観視していました。でもこの20年間ただ問題だ問題だと騒ぐだけで、実際には何も変化がないように見える。このまま放っておくと人口減少は、経済よりも極めて深刻な問題になるでしょう。

これから否が応でも移民の時代を迎えなくてはなりません。そのとき「寛容と包摂の時代」を真剣に考えることになるでしょう。