民主主義の脅威としてのポピュリズム

この記事は3年以上前に投稿された古いものです。
熊谷 徹

在独ジャーナリストの熊谷 徹は、最近面白い記事を寄稿してます。

米英などに比べてドイツの社会保障制度が手厚く、病気や失業などで生じる負担を軽減するセーフティーネットが設けられていること。ドイツでは、政府機関が運営する年金保険、健康保険、失業保険、介護保険、労災保険への加入が企業で働く全ての勤労者に義務付けられている。
(中略)
筆者は、右派ポピュリストが政権を奪取するのを防ぐ最大の防壁の1つは、社会保障制度だと考えている。
(中略)
日本の社会保障制度は、米国に比べると充実しているが、ドイツやフランスに比べると、貧弱だ。たとえば、ドイツ政府は企業に対し、従業員が病気やけがで働けなくなった場合、6週間まで給料を支払うことを法律で義務付けている。日本では、労働基準法が病休の扱いを規定していないため、大半の企業は病休期間の給料を支払わない。このため多くのサラリーマンは、病気で休む時にはまず有給休暇を消化する。ドイツでは、病休のために有給休暇を取ることはあり得ない。
(中略)
社会保障は、単なるコストの問題ではなく、人間の尊厳に関わる政治問題でもある。欧米の状況は、わが国でも社会保障制度の過度な刈り込みが禁物であることを教えている。
(「右派ポピュリズムを抑えるカギは社会保障にあり」2017.6.23)
「自分はグローバル化の負け組だ」と感じる庶民が、選挙や国民投票を通じて、それまでの常識を破る方向に国を動かし、「勝ち組」に一矢を報いる例が世界のあちこちで増えている。
(中略)
経済的な利益よりも感情を優先する傾向は、英国BREXIT(EU離脱)や、カタロニアの独立運動にも見られる。英国がEUから離脱したり、カタロニアがスペインから独立したりしたら、経済状態が悪化することは目に見えている。
(中略)
AfDもドイツのユーロ圏脱退を要求しているが、マルクを再導入したらドイツ製品の価格が高くなって、この国の輸出産業が大打撃を受ける。多くの市民はそうしたことに思いを致さないまま、AfDに票を投じた。
「独選挙で『過去との対決』を否定する極右が躍進」2017.10.23

熊谷徹の「ポピュリズムを抑えるカギは社会保障にあり」との見方は、的を得た意見だと思います。
病気や失業などで生じる負担を軽減するセーフティーネットの構築は政治の役割であり、政治にとって最も重要な課題なのです。

米、英と欧州諸国を、日本では同一視しますが、違うようです。一括りにしては、正しく観ることができないと思います。

これまでのグローバリズムの「経済的な合理性」より「アイデンティティー 」の方が重要な争点となってるのは確かなようです。
特に、欧州では「アイデンティティー」が「ポピュリズム」と同調しているようにも見えます。

(次ページへ続く)