フランスの知識人は何処か変わっているというか、個性的です。経済学者トマ・ピケティーもそうですが、エマニュエル・トッドも個性的です。著書”帝国以後”は有名で、専門分野は人口学、歴史学、家族人類学とのことですが、なんだかピンと来ません。
彼は”帝国以後”の中でアメリカについてこのように書いてます。
(様々な)事態に対して、アメリカ合衆国は、弱小国への好戦的な活動を増大する以外に対処するすべがないのだ。
目下のところ(日本など)アジアにおけるアメリカの安全保障システムへの依存の度合いが高いが故に、アメリカの軍事的行動様式のある程度の野蛮な側面は、ヨーロッパ人以上に自覚されている。
アメリカは単に軍事力だけで君臨していたわけではなく、その価値、その制度、その文化の威信によって君臨していたのだ。
(アメリカの)臣下の諸国は、もっぱら経済的かつ国内的なものである己の仕事に戻れると思った。 落ち着き無く動き回る攻撃的な、自己中心のアメリカというイメージであった。
世界が民主主義を発見し、政治的にはアメリカなしでやって行くすべを学びつつあるまさにその時に、アメリカの方は、その民主主義的性格を失おうとしており、己が経済的に世界なしではやって行けないことを発見しつつある。
世界とアメリカ合衆国の間の経済的依存関係の逆転、そして民主主義の推進力が今後はユーラシアではプラス方向に向かい、アメリカではマイナス方向に向かうという逆転である。
9.11の翌年、2002年当時にアメリカ一極主義の先を、どうしてここまで見透せたのか、優れた予見だと思います。
アメリカ大統領予備選のドナルド・トランプの発言を見れば、今のアメリカ人の本音が分かります。
これまでの新自由主義とグローバリズムに対する異論が噴出しています。たとえば日本への発言を見ると…
- 我々は日本から関税ゼロで何百万台という車を輸入している。これでは日本とまともな貿易など出来っこない
- 安倍はとんでもないことをした。円の価値を徹底的に下げて米経済を破壊している。安倍は米経済を殺した張本人だ
- 日本が攻撃されれば、米国は助けに行かねばならない。だが、我々が攻撃を受けても日本は助ける必要はない。日米安保条約は不公平だ
- 在日米軍・在韓米軍の駐留費は100%それぞれの国に負担させる。日本や韓国が100%負担しないのであれば駐留米軍は撤退する
アメリカは、すっかり変わってしまいました。”世界の警察官”だったアメリカは、今や、我が身を守ることに汲々とした巨大な Robust Puerile (タフな児童)になってしまいました。
Toddは、これからの世界を、人口学的にどう解析し、どうしてこのような予見をなすことができたのでしょう。
識字率と出産率(受胎調整)との関係で分析することができる
階級や宗教や民族を対立させるイデオロギー的・政治的混乱を心性の近代化に結びつけて説明できる。
識字化によって自覚的で平等なものとなった個人は、権威主義的な方式で際限なく統治されることはできなくなる。
文化の発達は識字率と出産率で解けるらしいのです。もともと識字率は高かった日本ですが、いま少子化で苦しんでいます。
Toddの家族人類学的な視点である家族類型に従うと、ドイツは日本と同じ直系家族だそうです。
それと対照的なのがフランスです。従ってフランスは人種に対しても平等意識があり、開放的なのだそうです。
彼の著書”「ドイツ帝国」” によると、ドイツだけじゃなく日本、スウェーデン、ユダヤ、バスク地方、カタロニア地方を驚異的な地域としています。
特にドイツがヨーロッパを牛耳ることは間違いないと言っています。面白いことに、小説「窓から逃げた100歳老人」のように、豪胆なスウェーデンも驚異的な国と見ているんです。
そして、未だに戦後を引きずる戦後70年のドイツと日本なのです。ヨーロッパにドイツ帝国が出現し、アジアでは日本が驚異(脅威?)となるというのです。
彼はこの図をこう評価しています。
この地図は現在のみならず、かなり近い将来の可能性も表している。(中略)この地図は、いわば、ヨーロッパの新たな現実を可視化する初めての試みだ。
ヨーロッパでは、ドイツ帝国が覇者となる時代を迎えたようです。
<追記(2017.5)>
この投稿を書いたあと、2ヶ月後の6月23日ブリグジット(Brexit)ショックが起きたのです。
エマニュエル・トッドは、更に遡って2015年にドイツ帝国の地図を描き、イギリスを「離脱途上」としていました。
そして、これまで略その通りになっています。
参考資料: