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難民と移民について

この記事は3年以上前に投稿された古いものです。

このブログで住む場所も自由化になると呑気なことを書いてしまいましたが、考えてみれば誰でも勝手に何処でも住める訳ではありません。

難民(Refugee)となるか、移民(Migrant)となるかでは全く違います。難民は政治的迫害、武力紛争、人権侵害から逃れ、他国に庇護を求めて来る人々のことで受入国では庇護の対象となります。移民は自由意思で12ヶ月以上、他国に移住する自由人です。

難民条約に詳しいのですが、簡単言うと迫害を理由に庇護を求める人を受入国は保護する責任があるというものです。
近年、ヨーロッパへの難民問題が大問題になっている通りです。

AAR
駒場東大前プラットフォーム待合室に貼ってあったAARのポスター

先日、電車のプラットホーム待合室にこんなポスターが貼ってあるのを見かけました。AAR Japan「難民を助ける会(NPO法人)」のポスターです。

偶々たまたま、社会総合研究所のセミナーでAAR Japan会長の柳瀬 房子氏を招いたセミナーに参加予定だったので、特に目を引きました。日本には、難民問題は無いと思っていましたが実は、昨年1万9千人の難民が日本に来ているそうです。

セミナーに行って、難民問題は日本人には凡そ関係ないと思ってたら大間違いだと気づきました。将来のために、今から考えておかなくてはいけない問題が潜んでいます。

人種、宗教、国籍などの理由で迫害を受け、難民となる人へは庇護が必要でしょう。しかし日本では、仕事して本国に仕送りしてる人や、日本語学校を中退したり、大学卒業後も日本に滞在してる人など、Over Stayの不法滞在が問題になっているのです。

難民申請者数の推移
(2018年2月13日朝日新聞)

日本の難民認定は、難民認定制度 就労目的の申請抑止へ運用変更といった問題にまでなっているのです。

本来の難民庇護の精神ではなく、不法滞在を逃れる手段として、難民申請が注目を浴びているというのです。
「難民申請すれば、就労ビザがもらえる」と誤解され、一挙に申請者が増えたのです。

今回、認定申請の運用見直しが厳しくなって、申請期間中は堂々と就労できないばかりか「就労が認められず、入管施設に収容」といったことにもなりかねないのです。

AAR 柳原
AAR会長_柳瀬房子

AARの柳瀬さんは、 ”日本で働きたい人は一杯いるのです。特に日本で大きなイベントがある度に、観光客に紛れて日本に不法滞在してしまう人が増える。今度の東京オリンピックの後も、不法滞在が増える。” と心配します。

何か可怪しい、日本の難民認定制度です。
昨年の申請者のうち審査処理されたのは1万1361。内訳は不認定9730、申請取り下げ1612、認定20というのですから、何か可怪しいと言われても仕方ありません。昨年1万9千人の難民が日本に来ている中身はこういったことでした。

エマニュエル・トッドが読み解く世界を思い出しました。彼は、中国の人口流出について、面白い考察をしています。

エマニュエル・トッド(Emmanuel Todd)
フランスの人口歴史学者

中国は今、人口流出の問題に直面しています。
中国にも移民は来ますが、それより多くの人が国を出ていっています。
ヨーロッパやアメリカが移民を引き付けるのとは真逆です。入ってくる人、出ていく人のバランスを見ると年間150万人が中国から出ていっています。
欧米では大学進学率は40%~50%。一方中国では6%と極端に低い。わずかヨーロッパの5分の1、国としては圧倒的な差があります。移民として流出しているのは教育レベルの低い貧困層だと思われがちですが、それは間違っています。
実際の移民はきちんとした教育を受けた人たちです。例えば19世紀にヨーロッパや日本で教育レベルが上がると田舎に住んでいた人は都会へ出ていきました。今はそれと同じことが、世界規模で起きているのです。それこそがグローバル化です。
未成熟な国から教育を受けた人がいなくなってしまうことは、非常に大きな問題です。
これは一般に余り知られていなきことですが、グローバル化によって安定した国と、逆に不安定になった国があります。
ヨーロッパと中国は特に不安定になり、先行きの見えない状況に陥りました。ヨーロッパと中国が似ているというのは不思議に思えるかもしれませんが、人口学的にみれば、それは間違いなく事実です。

中国の人口は巨大です。その中国の人口流出の動きを間近で見ることになるのは、この日本でしょう。
その時、日本はどう対処すれば良いのでしょうか?遠い未来の話ではなさそうです。今から研究しておかないと間に合いません。

本格的な意味で、難民も移民も経験してこなかった日本では、この人口歴史学的なグローバル化は、黒船以上のインパクトを与えることになるかもしれません。