米国大統領選は、まさかの出来事だったのです。
この特徴をエスタブリッシュメント(既得権益)に対する大衆の反旗とみられています。即ち、意思決定や方針樹立に影響力を持った既成の権威や勢力に対して、「No」を突きつけたんだと言われています。
アメリカでは、政治と経済は表裏一体の関係にあります。そしてアメリカ経済は今病んでいます。
誰もが所得格差の拡大を認めています。これほどの格差はかつてなかったほど深刻なものです。
今かつての中流層は無くなり、CEOや金融の僅か1%の最富裕層が、富の大半を保有するまでにしまったのです。
アメリカ経済は明らかに政治問題となりました。グローバル化とIT化によって自由主義は、人びとに格差を産んでしまった。
更に、その格差は代々世代をつなぐ社会問題にまでなったことに気が付き始めました。
自由経済の名のもとに発達した株主第一主義や、自由貿易協定によるグローバル化は何をもたらしたのでしょうか。
皮肉にも、その先鋒であったアメリカ自身が気がついたのです。
トランプ現象こそ、その際立った変化だと見ることができます。
スティグリッツ博士は、平等と繁栄が両立する、経済全体の修復が必要だと言っています。
もう間違った選択をしてはならない。現在の状況進路を変えるのは簡単ではないが、国のシステムを構築するルールを書き換えるという選択はできる。
そうすることで、政府と企業と労働者のバランスを取り戻し、万人のために機能する経済を作っていける。
ニューディール政策の革新的な遺産を基礎にして、上位1%における富の集中を抑え、中流層に安定と機会をもたらすルールを打ち立てるのだ。
ニューディールと言えば、昨今、公明党が提唱した「防災・減災ニューディール」の考え方も同じです。2013年12月11日に「国土強靱化基本法」が成立しました。
国土強靱化(ナショナル・レジリエンス)防災・減災の取組みが実体経済の刺激になるのは確実です。こうした政策を軽視してはいけません。(少々脱線しました)
TPPをはじめとする自由貿易協定とは、現実には管理貿易協定なのです。企業が海外で投資や取引を行う際に、現地政府の規制で不利益を被らないよう、投資家と国家間の紛争解決制度を作るのが目的です。具体的には、薬価(の特許)の維持や知的財産権の管理体制を作ることなどが目的なのです。
今、トランプ現象でTPPは反古にされるでしょう。
アメリカにとってもっとも重要なのは、過度に厳しい知的財産権を作ることでもなければ、公の意思形成に異議を申し立てる新しい権利を投資家に与えることでもない。すでに貿易で成功している人たちに、さらに有利に働くような保護を拡充すべきではないのです。
スティグリッツ教授は、著書「これから始まる『新しい世界経済』の教科書 」を、以上のように結んでいます。
戦争の世紀をくぐり抜け、経済成長の時代を終え、経済と政治の関係が密接に絡み合ったなかに我々はいます。
FTA(自由貿易協定)、M&A(企業買収)、バブル崩壊、通貨危機、そしてリーマン・ショック!我々はこれらを目撃してきました。
そして思うことは、経済も政治も、知性と良識ある者を指導者、為政者とする必要性を感じているのです。そして指導者や為政者は「無作為という名の決断」をしてはならないのです。
「枢要な公職にある凡庸な人物、これほど厄介なものはない。彼らが危機に臨んで下す無作為という名の決断は一世紀にわたって国家に災厄を及ぼす」という言葉を思い出します。
これからは、簡単にはいかない時代がやって来ます。ゆっくりと人道の時代になります。「人のためにある」民主主義を希求すべき時代になります。それは、すぐそこまで来ているように思います。またそう信じたい。
崇高な哲学を持たぬ政治や経済は、民主主義(民主制)を逆手に取って、間違った選択をすることがあります。
トランプ政権は少なくとも4年続きます。しばらく目を離すことができません。