民主主義の脅威としてのポピュリズム

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ポピュリストにとって憲法は、政権を維持するためだけにあります。「人民の唯一正当な代表として、永遠に政権に就く」目的のために、憲法さえ犠牲にしても構わないのです。
そもそも多くの憲法は、”包摂のための戦いゆえに発展してきた” ことさえ忘れさせます。そんな憲法改正を目標にするのです。

ハンナ・アーレントの「協調して活動する(acting in concert)ことができる個人」は、もはや何処にも亡くなってしまいます。

Jan-Werner Müller

ミュラー(Jan-Werner Müller)は、ポピュリストの特徴を、三点にまとめています。(ちょっと自我流の要約になりますが参考まで…)

  1. 自らが、唯一人民の代表だと言って国家を乗っ取るのです。「なぜ公務の中立性の名の下で真の人民の意志を遮っている者たちがパージされてはいけないのか?」と言い出します。
  2. 大衆クライエンテリズムclientelism(恩顧主義)、即ち公然と「支持者だけに報いて何が悪い」と言うのです。
  3. 市民社会の体系的な抑圧。即ち、非政府組織NGOに対して厳しく当たります。ポピュリストは同質な国を作るために、市民組織を抑圧して憚らないのです。

 

Hanspeter Kries

ポピュリストとは一体何なんだろう?純粋なナショナリストでもなく、強権主義者でもなく、単なるデマゴーグでもない。

チューリッヒ大学のハンス・ペーターUZH Prof. Dr. Kriesi Hanspeterは、ポピュリズムの形態には三つあると言います。

  1. イデオロギーとしてのポピュリズム。
  2. 政治戦略としてのポピュリズム。
  3. コミュニケーション・スタイルとしてのポピュリズム。

ポピュリスト実態は外見です。まるでゆるキャラのぬいぐるみのように、外見が重要であって中身はどうでもいいのです。
誰が入っているのか?男性か女性か?本質(中身)なんか問題じゃないのです。それがポピュリズムなのです。

現代社会は、選挙という民主主義手法で成り立っているのですが、その政治・政策が不在でも、暫くの間は支障がありません。

クン・ヴォッセン
Dr. Koen Vossen

オランダの Radboud Universityのクン・ヴォッセンDr. Koen Vossenは現代社会を以下のように評しています。

私たちは、奇妙なパラレルワールドに暮らしています。一方の日常世界では、粛々と働く公務員がいて、社会が機能している。一方の政治の世界では、民主主義をハイジャックしたポピュリストが闊歩している。

事実、2010~11年ベルギーでは、党の対立から500日以上組閣できなかったのですが、行政機能は何の混乱もなかったのです。

「ポピュリスム化する世界」国末憲人 著

「ポピュリズム化する世界」の著者(国末憲人)は、このように書いています。

ポピュリズムの問題は、私たちの民主主義と政治そのものの問題である。
いかにすれば民主主義が信頼を取り戻せるか。いかにすれば政治がポピュリズムから人々の支持を奪い返せるか。
大げさな原則論を振りかざすことなく、政治家か官僚にしか通じない政策専門用語を排して、誰もが参加できる等身大の議論を活性化させたい。その成否に、私たちの将来がかかっている。

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