第三の道

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ローマ帝国の繁栄と平和を謂うパックス・ロマーナPax Romanaこれをもじって、パックス・ブリタニカPax Britannicaや、パックス・アメリカーナPax Americanaの時代と言うが、今それが終焉したかのように言われています。
英国にブリグジット(Brexit)ショックが起き、米国のトランプ現象(Amexit) が起きた。これらの出来事は第三の道を志向したとは思えません。”困った時代”を迎たように思えてならないのです。

第三の道は20世紀初頭に登場し、1920年代にも、第2次世界大戦後間もない頃にも、更には英国サッチャー首相Margaret Thatcher後のブレア首相Tony Blair、米国クリントンBill Clintonの時も、第三の道が模索された時がありました。

少々古いが、アンソニーギデンズAnthony Giddens第三の道The Third Wayを読んでみました。

旧式の社会民主主義Social Democrasy新自由主義Neo-Liberalismを超克する道を第三の道として探っています。

民主主義を自由と平等のどちらに重きを置くか?
1989年、ソ連東欧の社会主義という壮大な実験が破綻しました。
その後、新自由主義Neo-Liberalismでは格差の問題が露呈し、社会民主主義Social Democrasyでは福祉国家の財政赤字など、民主主義の在り方が問われています。

さて福祉国家を支える国民皆保険の先輩諸国はヨーロッパです。福祉国家の制度は古くドイツのビスマルクまで遡ります。福祉は4っに類別されます。

  • イギリスの制度:社会的なサービスや健康保険を重視するが、所得に応じた給付制に特徴がある。
  • 北欧型福祉国家:税率が非常に高く、万人救済志向であり、給付レベルは高く、ヘルスケアを始め、豊富な資金を基に国のサービスが保証されている。
  • 中欧の制度:社会的サービスへの関与は比較的少ないが、他の点では豊富な資金に基づく給付がなされる。その主たる原資は雇用者の社会保険負担金である。
  • 南欧型の制度:中欧の制度と形式的には似かよっているが、中欧ほど包括的ではなく、支給額も低い。

社会民主主義Social Democracyの福祉国家は、制度のバランスだとも言えます。
自由でありながら、一定の平等を担保する制度を目指してます。

脇道にそれますが、平等(Equality)と公平(Equity)は違います。
軽々に平等を論じてはなりません。平等を謳って、公平(Equity=Fairness)が失われるようでは元も子もありません。

公平公正(Fairness)に通底します。公平は人々の機会均等が担保されて、公正であること、正義であることが求められます。
個人それぞれの差異や来歴で、機会均等の障壁となることがあってはなりません。まず公平さが担保された上での平等なのです。

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未来の能力ある人びとの芽を摘むようなことがあってはならないのです。

最低限の能力主義を社会的に保証できなくなった社会は行き詰まり、衰退します。
新自由主義Neo-Liberalismの先鋒であるアメリカは自由を担保し、公平にも平等にも、目を塞いできました。
そして今、病でいます。

誰もが、アメリカの所得格差の拡大を認めています。この格差はかつてなかったほど深刻で、経済的不平等を抱え込みました。
かつての中流層は無くなり、CEOや金融の僅か1%の最富裕層が富の大半を保有するまでになってしまったのです。
そして、これは世代を超え、貧乏人の子供は貧乏人に、金持ちの子供は遺産を譲り受け、又富裕層となる。これが新自由主義の結論であります。こんな新自由主義の選択でよいのでしょうか?

モリパパは、寛容と包摂の時代の到来を予感(希望)しています。
寛容さや知的体力を持つこと。自国のことも相手国のことも、寛容でありながら、適切な自己主張をしゆく、成熟した社会を作り上げることだと思います。すなわち折り合いをつけていく合意形成能力を持つ包摂の時代の到来が求められています。

アンソニー・ギデンズAnthony Giddens第三の道は包摂/包含(inclusion)だと定義しています。そして包摂な社会のKeywordは…

  • 包摂(inclusion)としての平等(公平)
  • 限定された能力主義(トップしか残れない能力主義ではない)
  • 公共空間(市民的自由主義)の再生
  • 労働中心社会を超えて
  • ポジティブ・ウェルフェアPositive Wellfare(ヘルスケア、教育費、年金)
  • 社会投資国家Social Investment State人的資本)Human Capital

これまで新自由主義を標榜してきた米国,英国ともに、国家主義(Nationalism)という排他的な方向へ向かっています。
かつて、歴史は国家主義(Nationalism)という戦禍に巻き込まれたことがあっただけに、今回のブリグジット(Brexit)、トランプ現象(Amexit)に戦慄を覚えざるを得ません。

米英いずれも新自由主義の下、グローバリズム(Globalism)を押し進めてきただけに、その影響は大きい。
今やグローバル化(Globalization)は、金融・投資の1兆ドル近いホットマネーが世界を駆け巡っている以上、止めることはできません。
また国家は、EU、UN、WTO、GATT、IMF、NAFTAなどの域内での役割を持ったコスモポリタン国家となっています。かつての国家主義を許す環境にはありません。

国際的なガバナンスが問われる時代になりました。Tax Haven租税回避地に対しグローバル・ガバナンスが求められる時代だと投稿を書きましたが、今やグローバル・ガバナンスどころか国際関係自体に亀裂が入りそうな危うい情勢になったようで、危惧しています。

新自由主義の終焉の地はこれだったたのか?と悪夢を見ることのないよう祈るしかありません。”困った時代”を迎えたようです。

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