日独の戦後、その違いについて

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日独は昔も今も所縁ゆかりのある国です。昔、伊藤博文は建国のため、ワイマール憲法を勉強し、森鴎外とエリスは恋に落ち、近衛秀麿は未完成交響曲を演奏しました。

しかし共に1930年代、軍備を拡大し、海外に版図はんとを広げようとしました。そして失敗し、敗戦の憂き目に遭いました。戦後は国際的な政治や軍事には口を出さず、目を閉ざし、経済に専念してきたと言って良いのかもしれません。

doitsunihon僕らは歴史を背負って生きています。
世界の悪玉に位置づけられた戦後の日独はともに、政治、軍事、金融についてはアメリカ、イギリスに席を譲ってきました。そして敗戦の荒廃カオスの中から、戦後が始まりました。すべて焼き尽くされた焦土の中から、瓦礫の山の中から始まりました。それは目に見えない心の、口にできない心の、凄惨な歴史から這い上がって来たのです。

日本もドイツも資源には恵まれず、広大な国土をも持たず、人的資源しかたのめませんでした。日独ともに製造(モノ作り)で成功を収め経済分野でも発展させることができました。そして、奇跡的な経済発展を遂げ、経済大国となることができました。

ところが、日本とドイツの戦後は、大きく違っているのです。
ドイツは社会的市場経済Soziale Marktwirtschaftとして発展し、日本は新自由主義Neo Liberalismをひた走って来ました。ドイツと対比してみると、日本の戦後史は新自由主義とグローバリズムに偏っていたことが浮き出てきます。
ドイツの戦後を勉強するとで、日本の戦後が改めて見えて来るように思います。

ドイツは東西に分断された悲惨な歴史を負っています。1989年ベルリンの壁が崩壊を抜きに、現在のドイツを語ることはできません。
東ドイツ併合によって、おそらく働き方の基本が変わったこともあるのでしょう。もちろん日本とは大きく隔たった考え方です。ドイツの社会補償制度は手厚く、多少行き過ぎていた面もあったのでしょう。
シュレーダーGerhard Schröder首相の「アゲンダ2010Agenda 2010」の改革修正が必要なほどだったようです。
それでも日本と比べ、社会補償制度は充実しているようです。そして、アゲンダ2010の効果はメルケル首相へと受け継がれ、ドイツはいまもその恩恵に浴しているそうです。

現在、ドイツは財政収支は健全化して来ました。即ちプライマリー バランス(PB)を黒字化することができました。
それに較べ日本は、世界最悪の財政赤字を抱え、「PBのゼロ」の目標さえ、2020年達成は無理なほどです。これまで積み上げてしまった1000兆円の財政赤字は、世界最悪の将来遺産です。

2016年末時点での中央銀行保有量上位20ケ国
※単位:トン ※データ:World Gold Council

中央銀行の金保有量を見てもドイツは米国に次ぐ保有国です。(2016年末 3,378トン)
日本は経済規模からみて、外貨準備高からみても僅か765トンで心配です。

ドイツはアメリカ国債を1000億$以下に押え込むことに成功してます。
日本は対米貿易黒字の殆どがアメリカ国債として、塩漬けになっています。残高は1兆1100億$(2017.9.10米国発表)に及びます。

このようにドイツと日本の財政基盤は著しく違って来てしまったのです。日本の財政の劣化が、累積した赤字が問われています。

「ドイツ帝国」が世界を破滅させる[文芸新書]の図表より
「ドイツ帝国」が世界を破滅させる[文芸新書]の口絵より

今や、ヨーロッパの覇者ドイツとなった「ドイツ帝国」との見方があります。

日本は、アメリカと同じ新・自由主義の戦後を歩んで、人口減少の中でも成長路線を夢見ています。
いま改めて「何のための経済成長か?」問い直すべき時期が来ているのではないでしょうか?

(次ページに続く)