札幌誕生を読んで

北海道に移住してきた者の目から見ると、北海道/札幌周辺も、日本の景色と何処か違う。
初めて恵庭を訪問した時「気候も米国中西部に似て、ここは米国だといってもいい程です。蒸し暑い東京からみればまるでリゾート地です」とつづったほどです。

住宅地だって、公園だって、まっすぐ伸びた道路だって、本来は日本にない景色なのです。狭く密集したところが無いのです。
だが、ここは
アメリカ中西部ではありません。似ているようで似ていない。ここ北海道/札幌は現代の日本的な匂いがします。

重たく長い歴史を感じさせない景観、歴史がない薄っぺらく現代的な景観、直線的な人工を感しさせる景観、そして因習深い言葉は北海道にない。
本土の日本には今も方言が残り、親しみを込めて同郷人と話すとこには方言が用いられる。

東京が江戸だったころは、全国各地から人が江戸に集まって、標準の言葉として江戸弁ができた。
北海道も入植者と移住者とによって出来上がった。だが、東京と違って歴史が浅い。いま北海道は、歴史や伝統や方言を作ろうとしているように思えてならない。新しい北海道/札幌である。

講演会の冒頭で、門井氏はこのように言った。

車を買うと「新車のにおい」がしますが、いいものですね。単に新しい製品のにおいではなく、この車を運転してどこへ行こう、誰を乗せようなど、膨らむ想像を含むにおいなのでしょう。この建物(道新の新ビル)もそんなにおいがします。新しいだけではなく、いろいろなことが、ここから始まっていく。

いま、新しく若い都市/札幌が気になる。100年後、200年後の札幌を見たら、どんな街、どんな都市になっているのか?気掛かりだ。それが北海道/札幌の魅力でしょう。

新車の匂いがする札幌が気になる。

 
 

参考;小説「札幌誕生」執筆の動機は 門井慶喜さん講演会詳報:北海道新聞デジタル

 

(完)