遺伝子組換え、ゲノム編集、ヒトゲノム

ゲノムGenomeとは遺伝子Geneと染色体Chromosomeから合成された単語です。ゲノム編集と遺伝子組換えとでは何が違うの?
そもそもの疑問に答えてくれそうな書籍を探していたら「生きている」を考える という本に目が留まりました。

中村桂子氏
今はJT生命誌研究所の中村桂子氏

著者は中村桂子氏。モリパパがまだ入社間もない若い頃のこと、三菱化成生命科学研究所を訪ねて、中村桂子氏と面談させていただいことがありました。

40年も昔のことで、何のために訪問したのか全く覚えてないが、お会いしたときの印象は、未だに鮮明に覚えています。
実に聡明な科学者といった印象でした。この方の書籍ならと、読んだ次第です。

現在のゲノムサイエンスに至るまでの歴史を概観するのに役立ちました。これ以上は専門分野になるから、素人には丁度いい本でした。

(厚生労働省医薬食品局安全部「遺伝子組換えの安全性について」をもとに作図)
(厚生労働省医薬食品局安全部「遺伝子組換えの安全性について」をもとに作図したブログを引用)

さて、遺伝子組み換えは、種を超えて新たな遺伝子を「挿入」する技術です。

1970年代から本格的に始ったもので、
ある種のウィルスや細菌は、DNAにまで入り込むことが分かっていたので、これを利用して、遺伝子組み替えのヒントに繋がったようです。その頃の研究材料はライフサイクルが速くて研究には都合がいい単細胞の大腸菌でした。
そして、大腸菌で大きな成果を挙げた研究がインスリンです。
インスリンを作るヒトの遺伝子を、大腸菌の中に入れ、その遺伝子を増やすだけでなく、実際に大腸菌にインスリンを作らせることに成功したのです。そして、今やインスリン製造は大腸菌によるものとなり、産業として大きく発展しました。

遺伝子組換えと言えば、スパーで見かける豆腐や納豆に「遺伝子組み換えの豆は使っておりません」と書いてあるので、危険な技術といった印象を与えられます。
しかし、「組み替えDNA技術」は、これまでは偶然にたよった突然変異の確率を、飛躍的に高めることができたんです。

最初は1960年代、P・バーグが大腸菌に感染する腫瘍ウィルスであるSV40を、大腸菌DNAに組み込むのに成功したことで、「組み替えDNA技術」が始まりました。

遺伝子組換え食品の安全性について(消費者向けパンフレット:平成24年3月改訂)
遺伝子組換え食品の安全性について(消費者向けパンフレット:平成24年3月改訂)

組み換えに成功すると疑問が生まれました。大腸菌の中にSV40という腫瘍ウィルスのDNAが入って、その大腸菌が、私たちの腸に入り込んだら癌になる危険はないのか?といった疑問でした。
当初、研究者自身がDNA操作に危機感を持ってました。
そういった議論からアシロマ会議が開かれたのです。

今では、除草剤耐性、害虫耐性の作物が大豆、トウモロコシ、小麦、イネなどが増え、作付面積も増えています。組み換え生物が生態系に与える影響なども次第にクリアされて、2004年にはガイドラインが緩和されました。そこで気になるのは、日本の食品へ誤った風評です。困ったものです。

DNA自体は三っの役割があります。①自己複製すること、②タンパク質合成の指示をだすこと、③自ら変化することの3点です。
特に最後の「自ら変化すること」が重要です。DNAは絶えず変化してきたからこそ、命をつなぐことが出来たのです。もし変異がなかったら、生物は進化できなかったのです。

自然の突然変異も、人為的な遺伝子組換え(DNA変化)も、DNA自体が変化することに何ら変わりはありません。
逆に、人為的であるからこそ監視したり管理することが可能なのです。遺伝子組換えでは想定外の偶発的な変異をもたらすこともあるかも知れないので、慎重な追跡管理が必要です。
開発されてから30年、研究室では現在は日常的な技術となってますし、安全性も生態系への影響も問題ところに来ています。

genome_editingさて、次はゲノム編集です。ある遺伝子を狙い撃ちしてノックアウト(破壊)したりノックイン(組み込み)する技術です。
ピンポイント編集ができます。遺伝子組み換え技術とは比較になりません。

2013年クリスパー・キャス9(CRISPR-Cas9)というスーパーツールが出来て、以降、ゲノム編集は飛躍的に発達しています。
既に、世の中には「ゲノム編集(Genome Editing)とは」といった企業広告まであり、興味を持つ研究者なら誰でもゲノム編集をしてみたくなるような時代になっています。

ゲノム編集した生物は遺伝子組み換え生物と同じく、厳格なルールが適用されています。
カルタヘナ法は、カルタヘナ議定書に基いて制定された国内法ですが、遺伝子組み換えした生物を自然界から確実に隔離して、自然界の生態系に影響を与えないよう管理されています。

今、注目を集めているのは、ヒトへのゲノム編集です。ヒトゲノムの完全解読は、2003年終了し、2004年10月の「Nature」に論文発表されて、初めて世界に公表されました。世界中2800名の研究者、13年をかけた、壮大なプロジェクトの研究成果でした。
ヒトゲノム(DNA)は、決して小さな分子ではありません。一個の細胞の中に32億もの塩基が並ぶほどの巨大なものです。32億もの塩基が並ぶということは、分子としてはとてつもなく巨大なものです。分子レベルの大きさでも直線に並べれば約1メートルに達します。そんなDNA分子が細胞の核にあり、そんな細胞が60兆個集まって我々の体はできてます。
そのヒトの全ての塩基配列を解読したことは、新たな生化学、分子生物学の歴史的な新時代の出発となったのです。

2015年4月、ヒトのゲノム編集に関するニュースが流れました。
中国広東省広州市の中山大学で、βサラセミアという血液の病気に、ヒトの受精卵を使ってゲノム編集をしたというニュースです。受精卵を母胎に戻していないので、ヒトに成長する事はありませんが、衝撃的なニュースは世界を驚かせました。

これからも、ヒトゲノムに焦点が当たります。そして研究はますます加速します。こんな凄いことが、ここ50年で起きていたんです。

下のYouTubeは、2014/01/17 に公開されたものです。ヒトゲノムに関して説明されたものです。約30分かかりますので、お暇なときにでも一度見ていただければと思い、掲載しておきます。
ながながと読んでいただき有り難うございました。



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