トマ・ピケティーTomas Pikettyの新・資本論

この記事は3年以上前に投稿された古いものです。

以前、このブログで紹介したトマ・ピケティーTomas Pikettyのパリ白熱教室の再放が始まります。

Thomas_Piketty

2015年4月6日(月)Eテレ 午前1時10分~午前2時04分の深夜ですから、録画して見るしか有りません。

見逃していた初回放送(2015年2月13日)の再放です。


今や人気となったトマ・ピケティーですが、仏リベラシオン(Libération)に連載(2004 /9-11)された「ヨーロッパを救えるか?」Peut-on sauver l’Europe?が原題です。(一部その後の時評(2012/1~2014)も収録)

ベストセラーとなった大著「Le Capital au XXIe siècle」(21世紀の資本論)とは違います。
この本は後ろの方から、興味ある処を拾い読みできる本で、一般向きです。
フランスで2012年1月出版されましたから、ギリシャ危機でユーロが大暴落した2011年11月直後で、表題「ヨーロッパを救えるか?」は、当時としては切迫するものがあったと思います。


「果たして「所得や富の不平等を軽減する鍵はあるのか?」、「21世紀にふさわしい適切な所得の再分配システムを作ることができるのか?」
「最初に付加価値税(VAT)を生んだ国フランス」「ユーロ危機に象徴される現代の資本主義が抱える課題に立ち向かった」

「自国通貨を一方的に切り下げるという伝家の宝刀を放棄したヨーロッパ。加盟国に共通の新たな経済・社会保障・租税・予算制度を導入しなかったことは、最悪の選択」
「国家がたった一人の人間で代表され、密室で満場一致でものごとが決められてしまう。」

「なぜ経済学者の大多数は、自由貿易を信奉しているのだろう。
市場と物価はそれぞれに任せ、モノとサービスの貿易は大幅に自由化された。しかし貿易自由化とグローバリゼーションによってる公平な再分配はいっこうに実現していない。」

「IMFはこれまで、累進課税自体を粉砕するために全力を尽くしてきた。富裕層に高い税率を適用するのは成長を阻害すると言ってフラット・タックスを主張してきた。そして、付加価値税引き上げと社会保障予算の切り詰めを主張してきた。」
「IMFは、2008年のグローバル金融危機を予測できなかったばかりか、財政緊縮策では景気後退を長引かせ、公的債務を元の状態に戻すには数十年かかると言う問題を抱えた。
ついに、2013年報告書で累進課税を擁護する立場に回った。」
「しかしIMFは、累進制の資産課税までは明言していない。
ヨーロッパの金持ちは個人で、貧しいのは国家なのである。個人の純資産からの累進税の徴収を可能にするものでなくてはならない。」

「いまやリベラシオン(Libération)を含めて、メディア株主の二枚舌を暴かなければならない。」と、「ヨーロッパを救えるか?」を連載しているリベラシオンに対してもトマピケティは容赦ない。

「度を越した高所得者に歯止めをかけるのは、税金とうい武器しかない。ユーロの17加盟国がそれぞれ金利の異なる国債を発行し、それに対して市場が自由に投機を仕掛け、しかもどの国も自国通貨を切り下げて対抗する荒技を使えない状況のなかで、ギリシャを悲劇に追いやった。そして遂にはユーロそのものを消滅させかねない。」

「ヨーロッパでいえば、ルクセンブルクはタックスヘイブン(租税回避地)となり、多国籍企業の税逃れを許してしまっている。
統合的な課税ベースの整備という手を打てば欧州議会のシュルツ議長Martin Schulzも重要な役割を演ずることができる。だから少しだけ夢を見よう、投票にいこう。


ユーログローバリスムでは、金融政策・財政政策の自由と関税自主権が失われ、資本および人の移動が完全に自由化された世界です。
だから故に多くの問題を抱え込んでしまいました。ユーロ圏は自由主義の先進国と言えるかもしれません。

そしてわれわれに唯一残された手段は、「投票」です。

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